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パーキンソン病の診断と治療



パーキンソン病の診断

パーキンソン病の診断は、あくまでも症状の始まり方(いつの間にか、身体の片側から始まり)、進行の仕方(ゆっくりと進行する)、診察のときの症状の特徴(じっとしている時にふるえ、随意的に動作をすると止まる、歩行や動作が遅い、など)で診断されます。
補助検査として、脳のMRI、CTの検査、アイソトープを使った心臓に分布する自律神経の働きを調べる検査(MIBG心筋シンチグラフィー)をおこなうことがあります。
脳のMRIやCT検査は、パーキンソン類似の症状を出す、治療可能なほかの病気がないか(脳腫瘍や多発性脳梗塞、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、など)、パーキンソン病とは区別されるほかの進行性の病気がないか(進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、など)、を区別するために行います。
MIBG心筋シンチグラフィー検査は、パーキンソン病で代表される脳の神経細胞の中にレビー小体が出現する病気(レビー小体病といいます)に特異性の高い検査ですが、病気の初期には必ずしも異常が出るとはかぎりません。
L-DOPA製剤を服薬して、効果が確実にみられることも診断の助けになります。

そのほか、嗅覚の検査や脳の超音波検査の結果や、レム睡眠期の異常行動症の有無(睡眠中に大声を出したり暴れたりする)も参考になります。

パーキンソン病の治療

パーキンソン病にはまだ原因から治療する方法はありませんが、症状をかなり軽くすることは可能で、発病後の余命を伸ばしたり、日常生活・社会生活の質を高めることに、多いに役立っています。

治療法には、1.内科的治療法(薬物治療)、2.理学療法、3.外科的治療法(深部脳刺激術や定位的脳凝固術)、があります。
薬物治療と理学療法は治療として、車の両輪のような関係にあります。薬の治療を最適化しそれによって得られた身体能力を十分活用することが、一般的な健康につながると考えるからです。一方、外科的治療法は、長期にわたる薬物治療で現れる薬物の欠点を補う治療ということができます

1. 内科的治療法(薬物治療)

パーキンソン病の治療は、薬物治療が主体です。症状の様子に合わせて、適切な薬の種類の組み合わせと量の調節が必要です。薬物療法については、後に詳しく説明します。

2. 理学療法

早期からの導入が望ましいと考えます。仕事や社会活動の現役から退いた方は、特に推奨します。改まって「リハビリテーション」という必要はありません。適切な運動を、適切な量、継続しておこなうことが大切です。そのような意味で、理学療法士と相談し、運動メニューを作ってもらうのも一つの方法です。

3. 外科的治療法

脳の淡蒼球、または視床下核という神経細胞が集まった部分に電極を正確に挿入し、刺激装置で持続的に刺激する方法です。L-DOPA治療の欠点である主に運動合併症(ウェアリング・オフ現象やジスキネジア、など)を軽くする目的でおこないます。(運動合併症については、薬の説明のところで詳しく述べます。)振戦のみが問題となる患者さんの場合には視床をターゲットにした電気刺激術や破壊術が選択される場合もあります。淡蒼球の場合、破壊術をおこなうこともありますが、近年は電気刺激術が主流です。
淡蒼球の電気刺激術も視床下核の電気刺激術も、振戦、固縮、無動・寡動、歩行・姿勢異常、ウェアリング・オフ現象、ジスキネジアを軽減させることができます。
視床下核の電気刺激術の場合には、L-DOPA減量が可能で、そのためにジスキネジアが軽くなると考えられています。

パーキンソン病の治療薬

パーキンソン病の治療薬は、大別すると、I. 脳のドパミン不足を補うため、またはそれを補助するための薬、II. ドパミンとは異なる化学構造を持った物質ですが、ドパミンと似た働きを持ったドパミンアゴニスト、III. ノルアドレナリンを補う薬、IV. その他の作用機序の薬、があげられます。

I. ドパミンを補う薬、またはそれを補助する薬

1. L-DOPA製剤
L-DOPAは40年以上前に開発された薬ですが、効果と安全性の面から、現在でも最も信頼されている薬です。L-DOPAはアミノ酸の一種で、ドパミンの前駆物質(脱炭酸酵素の働きを受けドパミンに変換される)です。微量ですが、もともと体の中にある物質ですので、効果も安全性も高いといえます。ただし、欠点もあります。もともと体内にあるアミノ酸ですから、その代謝が早く、服薬後小腸上部で吸収され、血液内に入り15分から60分で最高濃度に達したあと、約1時間15分で濃度は1/2に下がってしまいます(血中半減期といい、薬の作用時間の目安になる値が約1時間15分)。
働いているドパミン作動性神経の数が多い場合は、脳に取り込まれたL-DOPAは神経細胞に取り込まれ、ドパミンとして保存されますので、その効果は長く維持されます。病気が進行し、ドパミン作動性神経の数が少なくなってきますと、蓄えられるドパミンの量も減り、効果の持続時間が短くなってきます(このような現象をウェアリング・オフ現象といいます)。このような欠点を緩和するために後で述べるさまざまな薬が開発されてきました(後述)。
L-DOPA製剤にはL-DOPAのみを含有する製剤(L-DOPA単剤)と脳以外の臓器でL-DOPAの代謝を抑制する薬剤(脱炭酸酵素阻害薬・DCI)を配合したL-DOPA/DCI配合剤がありますが、現在はほとんどL-DOPA/DCI配合剤が用いられています。
L-DOPA/DCIの場合、末梢でのL-DOPAの分解が阻害されますので、L-DOPA単剤と比べて、服薬するL-DOPAの量が約1/5に節約できるのと、L-DOPAが代謝されて血液中に増えるドパミン濃度が低く抑えられますので吐き気や食欲低下の頻度が低いという利点があります。
配合されているDCIにはカルビドパとベンセラジドの2種類があり、商品名が異なりますが、効果にはそれほど大きな差はありません。

L-DOPA製剤は非常に効果はよいのですが、病気が長くなった患者さんでは、効果が短いという欠点があるのは先に述べたとおりです。その欠点を克服するひとつの方法としてL-DOPAを直接ポンプで小腸の上部(空腸という部分)に持続的注入し症状変動をなくしようという治療の考え方があります。この方法は外国ではすでに一般化されていますが、国内ではまだ臨床試験中です。この治療を継続して行うためには、胃ろうを通じて空腸に管を入れることと、注入用のポンプを携帯する必要があります。しかし、血液中のL-DOPA濃度は間違いなく安定化されますので、通常の治療で運動合併症がコントロールできない場合には、有用なひとつの治療法といえます。
2. カテコール-o-メチル基転移酵素阻害剤(COMT阻害剤)
一般名は、エンタカポンといいます。国内では商品名 コムタンで知られています。
L-DOPAの脳以外の場所(末梢臓器)での分解を抑制する薬です。つまり、末梢臓器でのL-DOPAの分解を抑え、血中半減期を長くすることに役立ちます。L-DOPAと同時服薬します。L-DOPAと同様血中半減期が短い薬ですので、L-DOPAと同時に服薬する必要があります。
3. B型モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO-B阻害薬)
一般名は、セレギリンといいます。国内では商品名 エフピー錠で知られています。セレギリンは脳でドパミンの代謝を抑え、脳のドパミンの量を高める方向に作用します。
この薬だけでも軽症の患者さんではパーキンソン症状を軽くできます。L-DOPA製剤との併用では、L-DOPAを約30%増量したのと同じ効果があるという報告もあります。

II. ドパミンアゴニスト

ドパミンアゴニストは、化学構造はドパミンとはまったく異なりますが、ドパミンが結合するドパミン受容体という蛋白に結合し、ドパミンと同じように信号を伝達する働きを持っています。

効果の面でL-DOPAと比べて異なる点は、経口薬の場合、効果時間が非常に長いこと、効果が弱いことがあげられます。前者はL-DOPAの欠点である効果時間が短いことを補うことに役立ちます。L-DOPA製剤と比べて効果が弱いため、病気の初期や症状の軽い患者さんに推奨されます。

パーキンソン病治療ガイドラインでは、年齢が若い患者さんで病気の初期、軽症例では、この薬剤で治療を開始することが推奨されています。年齢の若い患者さんで、ドパミンアゴニストが推奨される理由として、高齢の患者さんと比べてウェアリング・オフ現象が出やすいことがあげられます。

経口ドパミンアゴニストは基本的な化学構造の違いから、大きく2種類に分けられます。一つは、麦角アルカロイド系、他は非麦角アルカロイド系です。
麦角アルカロイド系ドパミンアゴニストには、ペルゴリド(商品名 ペルマックス)とカベルゴリン(商品名 カバサール)、非麦角アルカロイド系ドパミンアゴニストには、プラミペキソール(商品名 ビ・シフロール、ミラペックス)とロピニロール(商品名 レキップ)があります。いずれもL-DOPA製剤と比べて作用時間が非常に長いのが特徴です。ミラペックスは錠剤に工夫をし、錠剤の中身(プラミペキソール)がゆっくり溶け出し(徐放錠)、効果が24時間持続するようにしたものです。ロピニロールの徐放錠もまもなく国内で発売になります。
ドパミンアゴニストの共通の副作用として吐き気や食欲低下があげられ、L-DOPA製剤と比較して、その頻度が高いです。また下肢のむくみも生じることがあります。幻覚・妄想など精神症状としての副作用の頻度もL-DOPAより高いです。
麦角アルカロイド系ドパミンアゴニストを一日3mg以上、長期服薬した場合、心臓弁膜線維症が生じることがありますので、麦角アルカロイド系ドパミンアゴニストを服薬している場合には、定期的(半年ないし1年に1回程度)に心臓のエコー検査を行うよう注意が喚起されています。
一方、非麦角アルカロイド系ドパミンアゴニストの場合には、突発性睡眠発作(眠気の前触れなく突然眠り込んでしまう)が生じることがあり、警告として薬の説明書には記載されています。

2012年に、短時間作用性のアポモルヒネ(商品名 アポカイン)というドパミンアゴニストが発売されました。アポモルヒネはドパミンと構造が類似していて、他の抗パーキンソン病の治療で、効果の持続が短く、急に動けなくなったとき(オフ症状のとき)に、緊急避難的に自分で皮下注射することで、動けるようにするための薬剤です。
短時間作用性の薬剤ですが、貼付薬(貼り薬)として持続した効果をはかれるよう、開発された薬剤もあります。一般名 ロチゴチンで、すでに国内臨床試験を終えています。

III. ノルアドレナリンを補充する薬

一般名をドロキシドパといい、L-DOPAと同じく脱炭酸酵素の作用を受けノルアドレナリンとなり作用します。ノルアドレナリンは末梢では血圧を上昇させる物質です。この物質が脳の中でどのような働きをしているかは、十分にわかっていないのですが、パーキンソン病の脳では、ドパミン以外にノルアドレナリンも欠乏することが知られています。
病気の進行したパーキンソン病患者さんで、適切な量のL-DOPAやドパミンアゴニストの治療が行われているにもかかわらず、すくみ足や突進現象がみられる患者さんのに、効果がみられる薬剤です。立ちくらみを改善させる作用もあります。

IV. その他の作用機序の薬

1. アマンタジン
アマンタジン(商品名 シンメトレル)は、グルタミン酸受容体の一種、NMDA(N-メチル-D-アスパル酸)受容体に拮抗することで、間接的にドパミンの作用を調節しています。
パーキンソン症状を少し軽くする効果と、L-DOPAの副作用であるジスキネジア(あとで説明します)を軽くする効果があります。
2. ゾニサミド
ゾニサミドは、抗てんかん薬としてよく知られている薬ですが、あらたに抗パーキンソン病薬として承認された薬です。通常の抗パーキンソン病薬の治療で生じた、ウェアリング・オフ現象(後で説明します)のオフ症状の緩和や振戦をはじめとするパーキンソン症状を軽減させます。
3. 抗コリン薬
脳のアセチルコリン受容体のうちムスカリン作動性受容体に拮抗し、アセチルコリンの働きを抑えます。パーキンソン病の線条体(とくに被殻)ではドパミン欠乏の状態にあり、アセチルコリンの働きが相対的に優勢な状態になっていると考えられています。抗コリン薬は、アセチルコリンの作用を抑えることで、線条体の中のドパミン、アセチルコリンのバランスを平衡化しようとするものです。
パーキンソン症状のうち、振戦を軽くする目的で使われることがありますが、L-DOPAとの比較では振戦に対してもL-DOPAの方が効果が勝っています。
認知症のある患者さんや、高齢者では使わない方がいい薬です。主に年の若い患者さんで、L-DOPA製剤の使用を先延ばしにしたい場合や、ある程度L-DOPAやドパミンアゴニストを使って、それでも振戦がとらない患者さんなどで、使用が考慮される薬です。

パーキンソン病の薬物治療

原則として、患者さんが、同年代の人たちと同じ程度に日常生活や社会活動ができるようにすることが目標です。
患者さんの症状の程度を把握すること、患者さんの希望を十分に聞くことが、治療の根本です。通院を重ねていただきながら、症状の程度や、患者さんの薬に対する反応性(効果と副作用)、患者さんの満足度を確認しながら、その人その人に応じた薬の種類や用量の調節を行って行きます。

治療開始時の薬の選択は、患者さんの年齢や症状の程度、患者さんの置かれた家庭や社会の背景によって異なります。パーキンソン治療ガイドライン(ガイドライン)などで、その原則が示されています。
種々の治療合併症に対する対処方もガイドラインに示されていますが、大切なことは、担当の先生が、状態を正しく認識できているかどうか、です。そのためには、十分な問診や、観察が必要になりますし、患者さん自身の上手な説明があると、さらに理解が深まり、よい対策が立てられることになります。

治療の際に、非常に副作用を心配される患者さんがありますが、多くの副作用はそれほど恐れるものではありません。抗パーキンソン病薬の副作用は、薬の減量で消失するものばかりで、薬の調節もやり直しがきくものだからです。
抗パーキンソン病薬の副作用(とくに中枢性の副作用、精神症状や不随意運動など)は効果と同じ線上にある場合が多く、効果がでる薬の量と副作用が出てしまう薬の量の差(安全地領域といいます)が大きいほど、治療がしやすいということになりますが、個人差があります。私たちは、この安全地領域を患者さんの暦年齢や、身体年齢、病気の進行度、認知症合併の有無、他の合併症の有無、などから推定しながら治療を進めて行きます。
それから、薬の副作用とひとまとめに表現されますが、薬のせいばかりとはいえない理由がパーキンソン病の場合にはあります。たとえば、運動合併症のひとつウェアリング・オフ現象ですが、これは患者さんのドパミン神経の数が少なくなった結果、ドパミンを保存する能力が低くなり、ドパミンを使い切ってしまうような状態になりやすいことと、ドパミンを補充するもととなるL-DOPAの血中半減期が短い(短時間で血液中からなくなってしまう)ことが大きな要素なのです。言い換えますと、患者さんの病気の進行にともなって、L-DOPAの薬としての欠点が明らかになってきたのだいえます。では、対処方法がないのかといえば、決してそうではありません。ウェアリング・オフ現象のコントロールはパーキンソン病治療に携わる私達の腕の見せ所なのです。

ジスキネジアの場合はどうでしょうか。ジスキネジアの原因は、ドパミン作動性神経のドパミン保持能力の低下の結果、ドパミン受容体の刺激がコンスタントに行われなくなり、そのためドパミンを受ける神経の興奮性の調節がうまくできなくなった結果生じると考えられています。L-DOPAの効果のピークで出現するジスキネジアはある意味、薬の効きすぎに相当し、薬の量を減らすことが一応の対策になります。ですが、そもそもジスキネジアの始まりは、ドパミンの受容体刺激がコンスタントでなかったことに原因するわけですから、ウェアリング・オフ現象と同様、ドパミン受容体の刺激を安全治療域の範囲で一定化することが、最もよい対策になることが、わかっていただけると思います。
ジスキネジアには、その強さにさまざまな程度があります。いろいろな動作の邪魔になるほど強いジスキネジアは副作用というべきでしょうが、程度の軽いジスキネジアはむしろ患者自身からは、気にならず、日常動作面ではむしろ活動しやすいと感じられる患者さんが多く、必ずしも副作用、イコール「悪」ということではない場合もあるということです。
幻覚や妄想など薬剤で誘発された精神症状の場合は確かに困ります。精神症状の発現は、必ずしも薬のためだけとは言い難いからです。パーキンソン病の病理学的な定義として、顕微鏡でみてわかる、レビー小体という封入体が細胞内に確認できることがあります。その封入体の分布は、脳の幹に当たる部位にある神経核(黒質など)に限局しています。ところが、幻覚・妄想が出現する患者さんの場合、大脳皮質の広範囲の神経細胞内にレビー小体が出現しているという研究結果があり、もともと脳の病変の分布が広く、そのため、幻覚に関して安全地領域が狭かった可能性があるからです。
一旦、幻覚が出現しますと、それを抑制するため、抗パーキンソン病薬を減量したり、認知症の薬や抗精神病薬を併用することになります。前者、抗パーキンソン病薬の減量は、間違いなくパーキンソン症状を悪化させますし、後者も抗精神病薬を使用する場合、その選択によってはパーキンソン症状を悪化させる可能性があります。

ここで、言いたかったことは、副作用といっても、すべて薬のせいばかりではないこと、副作用は誰にでも出るわけではないこと、薬によって出現した副作用は、減量によって消失させることができ、取り返しのつかないものはない、ということです。