2024.02.15
- 取り組み
特定行為看護師の取り組み 石橋総合病院
病院における看護師の業務は「療養上の世話又は診療の補助」と定められています。
しかし医師の負担軽減や、看護師による迅速な処置の提供など、看護師の役割拡大が必要な時代となってきました。そこで看護師が医師の医療行為を部分的に行える「特定行為看護師」という制度が2015年に始まりました。
特定行為は合計21区分38行為。
eラーニングでの座学と、厚生労働省が指定した病院や学校などでの研修を約1年間受け、試験に合格することで特定行為看護師になることができます。
石橋総合病院(住所:栃木県下野市下古山)では「中心静脈カテーテルの抜去」と「末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入」の研修を終えた特定行為看護師が在籍しています。今回は特定行為看護師の金澤清美さんに話を伺い、お伝えします。
<金澤看護師は栃木県の出身。高校卒業後は一般企業に就職しますが、小さい頃の夢だった看護師になることが諦めきれず、看護学校に進学し看護師になりました。
他医療機関で働いたのち、2014年に石橋総合病院に入職。病棟での経験を経て、現在の外来へと異動になりました。
そこである問題に気がつきます。>
(金澤) 当院では抗がん剤治療の患者さんに対して、外来診療中の医師がPICCの挿入を行っています。そのためPICC実施中は外来診療が止まってしまい、早くても20分、長いと数時間も患者さんを待たせてしまうことがありました。体調が悪い患者さんを長時間待たせてしまうことを改善できないのだろうかと感じていたんです。
<腕の静脈から心臓付近の太い静脈まで柔らかいプラスチック製のカテーテルを挿入し、薬剤を投与する方法をPICC(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル)と言います。
首からのカテーテル挿入に比べ、合併症の心配が少なく、血液の流れが多い太い静脈に直接薬剤を投与することできるため、刺激性のある抗がん剤でも薄まり、血管を傷めにくいなどのメリットがあります。また、適切な管理がされていればカテーテルの定期的な入れ替えの必要がなく、長期間使用することができます。>
<金澤さんは、自身の中で感じていたこの悩みを、血液内科医師に相談してみたと言います。>
(金澤) 血液内科医師から「特定行為の中にPICCがあるから看護師だってできるよ。研修受けてみたらどうかな?」と言われました。お恥ずかしい話なのですが、PICCが特定行為の中にあること。それ以前にPICCという医療行為ですら外来に来るまで知りませんでした。
<当時、看護師になって20年近くが経ち、何かしらの資格が欲しいと思っていたそうです。もし自分がPICCを挿入することができれば医師が外来診療に集中することができる。結果、患者さんの待ち時間も減らすこともできる。「全ての思いが合致した」と金澤さんは言います。
また、研修には40万円ほど費用がかかりますが、友志会グループでは認定看護や特定行為といった研修にかかる費用を法人負担で受講することができます(※諸条件あり)。そういった費用面の補助も金澤さんには大きかったと言います。>
<令和3年10月から研修が始まりました。まずは半年間eラーニングで全項目共通の「共通科目」を学び、筆記テストに合格したら次は各区分に分かれ指定研修機関にて実習を行います。>
(金澤) 実習は近隣の大学病院で行いました。担当の医師からは「実習中は看護師ではなく、研修医になりなさい」と言われました。生命に直結する心臓の近くまでカテーテルを挿入するという侵襲性の高い行為を行うという責任もあり、知れば知るほどPICCが怖いと思いました。だからこそ研修を修了した時の達成感はありましたね。
<1年かけて研修を終え、晴れて特定行為看護師になれた現在は、看護師として医師の診察の補助をしながら、週に1~2回PICCの挿入を行っています。>
(金澤) 単純にPICCの挿入ができるようになった以外にも、看護師としてのレベルが上がったと感じます。カルテや画像の見方、医師の診療の意図、自分が医師に何をどう伝えればいいのか、そして患者さんにどう説明をすればいいのか。世界が変わり、解像度がグッと上がったと感じました。
<肝心のPICCについては、石橋総合病院で初めての特定行為看護師ということもあり、不安も多かったと金澤看護師は言います。>
(金澤) 看護業務と並行してPICCを行うため、時間がかかってしまうこともありますが、患者さんからも励ましの言葉を多くいただいています。本当にありがたいです。
特定行為看護師が増えていくことが、病院全体、そして地域医療の質向上につながると思います。これから後輩たちにも特定行為の研修を受けていってもらいたいと考えているので、みんなが活動しやすい環境を整えていきたいと思います。
取材:R5.12